気になった特許の話題 -Patent Topics Explorer-

気になった特許等の知的財産の話題やニュースをピックアップしていくブログです! This blog is picking up intriguing IP topics including patents, trade secrets etc. !

 

 

2025-01-01から1年間の記事一覧

欧州: ついに決着!「市販で買えるけど作れないモノ」は先行技術か?EPO拡大審判部 G1/23決定

特許においては、「先行技術」という概念が非常に重要です。これは、ある発明が特許として認められる「新規性」や「進歩性」があるかどうかを判断する際に参照される、出願日前に公衆に利用可能であったすべての技術情報を指します。 しかし、これまで欧州特…

ノーベル賞を受賞したタンパク質構造予測AIを生んだ国際コンテスト「CASP」が資金難で消滅の危機

今回は、生命科学やAI分野に大きな影響を与えてきたタンパク質構造予測の国際コンテスト「CASP」が資金難で消滅の危機という記事を紹介したいと思います! Exclusive: Famed protein structure competition nears end as NIH grant money runs out (2 Jul 20…

米国: 「海賊版データ」での生成AI開発は著作権侵害となるのか?米国連邦地裁が下した判断

生成AIの急速な発展は、私たちのクリエイティブな活動を大きく変えつつあります。しかし、その裏側で、AIの学習データが著作権で保護されたコンテンツに大きく依存しているという問題が浮上しています。近年、この問題は裁判所の審理の対象となり、注目すべ…

速報:東京地裁、Google Pixel 7に販売差し止め命令!日本の標準必須特許(SEP)訴訟に新たな局面

標準必須特許に関わる日本の訴訟で大きなニュースが飛び込んできました! 東京地方裁判所は、韓国のモバイルメーカーであるPantechが米Googleの日本法人に対して起こした特許侵害訴訟において、Googleの製品であるPixel 7の販売差し止めを命じる判決を下しま…

欧州: EPOとUPCの調和へ大きな一歩。G1/24審決が示すクレーム解釈の基本原則!

クレーム解釈時の明細書参酌についての拡大審判部の審決G1/24が出ました。 https://link.epo.org/web/case-law-appeals/Communications/G_1_24_Decision_of_the_Enlarged_Board_of_Appeal_of_18_June_2025.pdf 今回拡大審判部に付託された質問は以下です。結…

欧州: AIは「当業者」になれるのか? - 欧州特許庁 T 1193/23 からの示唆

ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)の進化は、多くの分野で影響を与えています。では、知的財産、特に特許の世界ではどうでしょうか? AIは、特許の新規性や進歩性などを判断する基準となる「当業者(a person skilled in the art)」の代わりに…

米中AI特許戦争、日本はスタートラインにもいない?特許庁レポートが示す絶望的な差

2025年6月に特許庁が「AI関連発明の出願動向調査(国際編)」を公開しました。しかし、その内容は世界のAI開発が完全に「米中二強時代」に突入したこと、そして日本がその激しい競争の舞台から大きく取り残されているという厳しい現実を、残酷なまでに明確な…

日本の特許戦略を左右する?ネットワーク発明の「域外適用」問題

産業構造審議会特許制度小委員会では、来る特許法改正についての議論が行われていますが、今回の焦点の一つがネットワーク関連発明についての特許権の域外適用です。 ソフトウェアなどの発明は現在はインターネットなどのネットワークでその情報処理などが行…

米国: バイオ特許の落とし穴?Xencorの事例から学ぶ、方法クレームとJepsonクレーム前文の重要性

今回は、IN RE: XENCOR, INC.という米国のCAFCの事件を見ていきたいと考えます。 この裁判は、USPTOのPTABによるXencorの特許出願の拒絶維持決定に対するものです。CAFCは、前文の限定とWritten Descriptionの関係について判断したものとして興味深く、また…

AI時代の経営リスクを回避せよ!データガバナンスの4つの柱と経営者の責任

デジタル庁から、経営者を対象として、データガバナンスについてのガイドライン案の意見募集が2025年5月23日期限で始まっています。 www.digital.go.jp 今回のデータガバナンス・ガイドライン案は、デジタル庁が作成したもので、企業の経営者を主な対象とし…

AIが科学を加速する時代へ──JST報告書が示す新潮流

国立研究開発法人科学技術振興機構 研究開発戦略センターからAIについてのトレンド調査の報告書が出てきたので、メモ。 www.jst.go.jp AI技術の発展は、以下の3つの潮流で捉えられているようです。 AI基本原理の発展(さらなる高性能化): 基盤モデル・生成A…

米国: AI応用特許のハードルは高い? 初めての控訴審判決に迫る

Recentive Analytics v. Fox Corp.という事件で、AI特許の特許適格性(米国特許法101条の適格性)についての初めての控訴審(CAFC)の判決が出たそうです。結果としては、特許が認められず、AI特許についてのハードルは米国では日本とは異なる注意点がある可能性…

中国: 最高人民法院の2024年知財注目事例で面白かった事件をピックアップ

中国の最高人民法院から2024年の知財注目事例が出たそうで、その中から個人的に面白かった事例をピックアップしてみようかなと思います。 こちら(中国語のみ) 事例1.「mRNA骨関節炎薬」発明特許権帰属事件 事例2.不動産分野における商標権侵害及び不正競争事…

待望の米国著作権解説本の新刊

このブログでも米国の著作権にまつわるAIの事例を挙げることが多かったですが、昨今の知財本があまり出ない事情も加わり、アメリカの著作権法の解説本は不毛地帯となっていました。 そんなところに朗報です!2025年5月にアメリカ著作権法の新刊が出るようで…

生成AIをどんなものか知らないというのが半数という衝撃!

NTTドコモ モバイル社会研究所の調査によると、約半数が生成AIをどんなものか知らないという衝撃の結果がでたようです。 japan.zdnet.com 実際のレポートはこちらのようです www.moba-ken.jp 以前別のレポートでも会社の中での生成AIの利用が、 一般社員 >…

米国: 機械学習は著作権侵害?フェアユースをめぐる訴訟は控訴されたそう

米国では、機械学習のフェアユースの適用を巡って、トムソンロイター v. Ross Intelligenceの訴訟が起こっていました。 2月ごろにこちらの判断が下され、学習データの著作物性が認められると共に、フェアユースの適用が否定される結果となっています。 www.n…

ジブリ風の衆議院内閣委員会でのやりとり

衆議院内閣委員会で、ジブリ風についての質問が文化庁に対してなされたそうです。 www.sankei.com 実際の答弁としては下記のようです。AI推進法についての審議の中で出てきた話題のようです。 youtu.be 文化庁としては、従来の解釈通り、作風のみでは著作権…

AI制作アニメ「ツインズひなひま」と、制作過程の紹介セミナー

最近知ったのですが、「ツインズひなひま」というアニメがあるらしく、AI制作アニメでもあるそうです。 こちらが公式サイト。全一話のテレビ放送ですでに放送済みだそう。 anime-hinahima.com ニュースによると、アニメ制作においては、「実際の製作では、3D…

みんなはどんな風に生成AIをつかっているのか?

生成AIがメディアで目につきますが、みんなはどんな風に生成AIをつかっているのか気になるところです。 生成AIは誰がどう使っている? ChatGPT、Gemini、Copilot、Claudeの利用データを比較調査 | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジ…

大合議の判決全文が出たけれど

判決の全文(PDF:560KB) 大合議判決の全文が先週出ました。損害賠償の黒塗りとかあって時間かかるかもなと思っていましたが、全文出るの早かったですね。 前回にも書きましたが、要旨を読んだ時点で自分が疑問に思っていたのは、下記でした。 (1) 事実認定の…

知財高裁大合議: 美容医療特許の侵害訴訟事件に関する判決要旨

判決の要旨(PDF:371KB) 2025年3月19日に予定されていたように判決が言い渡しとなった。 記載時点では、まだ判決全文がでていないのだが、要旨だけ見て気になる点は2つ。 (1) 事実認定の部分がどうなっているのか 地裁では、構成要件の3成分が、同時投与…