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日本: 特許の存続期間の延長登録の許否において、70条2項に基づいて、特許請求の範囲に記載された用語の意義を明細書の記載を考慮して解釈した事件

特許の存続期間の延長登録の拒否を判断するにあたって、延長登録を申請する対象の医薬品の製造販売行為が、特許請求の範囲に係る発明の実施に該当するかが判断されますが、当該特許請求の範囲の解釈において、70条2項に基づいて、明細書の記載を参酌できることを判事した事件です。

 

令和3(行ケ)10016[知財高裁第2部:本多裁判長]

裁判例結果詳細 | 知的財産高等裁判所 - Intellectual Property High Courts

*令和3(行ケ)10016~10021までが該当事件です

 

本件では特許請求の範囲の「緩衝材」の解釈が争われた事件です。例えば裁判例の中では「なお,原告は,本件において,本件明細書の記載を考慮すべきではない旨主張しているが,特許法70条2項は一般的に特許発明の技術的範囲を定める場面に適用され,特許侵害訴訟における充足性を検討する場面にのみ適用されるものではないから,原告の上記主張は採用できない。また,原告は,オキサリプラチンから遊離したシュウ酸が緩衝剤としての役割を果たすと主張するが,同主張は本件特許の特許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載に整合していないし,一般に,有効成分である化合物が水溶液中で分解した場合に,当該分解物を「緩衝剤」と称するというような技術常識があると認めるべき証拠もない。」とされています。

 

本件では上記に基づいて「緩衝材」の用語の解釈がされた上で、本件医薬品を製造販売する行為が本件各発明の実施行為に該当するかが判断され、審決に誤りがないとされています。

 

法律論的なところになりますが、特許の存続期間の延長登録における特許請求の範囲の用語解釈が発明の要旨認定としてのリパーゼ判決が適用されるのでなく、侵害等の場面における特許発明の技術的範囲の認定(70条2項)により、明細書を参酌したところが興味を引く判決です。