先日カナダの特許権の設定登録後の発明者訂正が可能かを裁判所で争った事件を紹介しました。一方で、日本においては発明者の訂正は可能なのでしょうか。下記で簡単に触れたいと思います。
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1. 登録前
特許の発明者の訂正が日本でできるかという質問に対して、まず発明者が特許出願の書類の"どこ"に記載されるかがポイントとなります。
特許出願で発明者は「願書」の欄に記載されます。したがって、願書が補正(訂正)できるとされる時期が発明者の補正(訂正)ができる時期になります。
一方で下記の方式便覧にあるように一定の制限がつきます。発明者の追加削除は理由と宣誓書が必要だったり、一定の誤記訂正も理由と宣誓書が必要だったりと、それなりに面倒な作業にはなります。出願から時間がたち発明者と連絡がつかないというような事態になるとどうしようもならなくなったりします。発明者とは連絡がつく状態を保つことが大事です。特にこのような問題は出願から時間がたってから顕在化することもあります!
1. 誤記の訂正が発明者自体の変更になる場合
(1 )発明者相互の宣誓書( 変更前の願書の発明者の欄に記載のある者と補正後の同欄に記載される者の全員分の真の発明者である旨又はない旨の宣誓)
(2 )変更( 追加 、 削除)の理由を記載した書面
2. 発明者の表示の誤記を訂正する場合
誤記の理由を記載した書 面なお 、誤記の訂正が発明者自体の変更のおそれが ある場合 ( 例えば、 姓及び名又は姓及び住所を同時に訂正する場合等)には宣誓書の提出を求め る。
3. 発明者の記載順序を変更する場合
発明者の順序の変更 (発明者の記載内容に変更なし)である 旨を記載した書面
方式審査便覧 21.50
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/hoshiki-shinsa-binran/document/index/21_50.pdf
2. 登録後(又は拒絶確定後)
特許権の設定登録後(又は拒絶確定後)は、事態が異なります。
この場合、願書の記載事項を修正することになりますが、訂正審判では願書は訂正の対象になっていません。拒絶確定後も特許庁に係属しなくなりますので、補正の対象とはなりません。
また、現時点で特許庁の手続きで特許権の設定登録後に発明者の訂正を認める手続きはないようです。
実際に、特許庁のQ&Aにおいても「設定登録後は、発明者の補正・訂正は一切できません。発明者の補正は、出願が特許庁に係属している間のみ可能です。」となっています。
3. 結論
結論としては、日本で発明者の補正・訂正ができるのは、特許出願が特許庁に係属持している時期に限られ、方式便覧に従った手続きを行う必要があります。