昨年の9月に出版された書籍「オープンイノベーションの知財・法務」を読んだので書評です。
こちら中村合同特許法律事務所に勤められ、スタートアップと法務・知財に関して多くの書籍や論文を執筆されている山本飛翔先生が書いている書籍です。
オープンイノベーションの重要性が叫ばれて久しいですが、近年は大学と共にスタートアップの重要性が高まってきました。本著はスタートアップとの連権を軸に、スタートアップ-大企業の提携やスタートアップ-大学の提携に関連する契約について解説がされています。特にスタートアップ視点で、投資家などへの公表や将来の上場等も意識した契約ドラフトが解説されており、スタートアップの方には参考になると思います。また大企業や大学も必ずしもスタートアップが何を契約条項に求めているか理解していないことも多いかと思うので、こちらを読み相互理解を深め、よりよい提携が目指せるのではないかと思われます。
加えて、スタートアップとの提携では出資も選択肢として広がってきていると思います。本著は出資に関する契約もしっかりとカバーされており、とても参考になります。特に出資に関しては公取委の方も優先的地位濫用に対して目を光らせ始めようとしている状況です。
www.patent-topics-explorer.com
よりよいスタートアップの提携に向けて、スタートアップの方だけでなく、大企業や大学の方も相互理解を深めより良い提携に向け、とても参考になる書籍だと思います!
【この本の内容】
協業により、革新的ビジネスモデル、研究成果、製品開発、組織改革、地域活性化などにつなげるオープンイノベーションの法務を解説。
前著『スタートアップの知財戦略』において総論的なものにとどまっていたオープンイノベーションに関する言及を、コンパクトながらも実践的に内容を深く掘り下げる。大企業・大学・スタートアップ、それぞれの論理・利害関係を踏まえた上で、いかなる座組でオープンイノベーションに取り組めば、Win-Winになるか。当事者双方の視点を盛り込んだ指南書。
【目次】
はしがき
第1章 オープンイノベーションの意義及び課題
1 なぜ今オープンイノベーションなのか
2 オープンイノベーションの意義
3 オープンイノベーションの課題
第2章 スタートアップと大企業とのオープンイノベーション(その1)出資を伴わない場合
1 着手前に取り組むべき事項――大企業側の留意点
2 着手前に取り組むべき事項――スタートアップ側の留意点
3 検討開始段階の留意点1――独占禁止法との関係
4 検討開始段階の留意点2――NDAを中心に
5 開始段階の留意点――PoCを中心に
6 共同研究開発段階の留意点
7 事業化段階の留意点
第3章 スタートアップと大企業とのオープンイノベーション(その2)出資を伴う場合1――CVCの場合の留意点
1 CVCの目的
2 目的に応じた留意点
3 スタートアップへの投資における契約上の留意点1――総論
4 スタートアップへの投資における契約上の留意点2――投資契約(株式引受契約)
5 スタートアップへの投資における契約上の留意点3――株主間契約
第4章 スタートアップと大企業とのオープンイノベーション(その3)出資を伴う場合2――M&Aの場合の留意点
1 スタートアップに対する知財デュー・デリジェンスにおける留意点――スタートアップが事前に整えておくべき事項
2 スタートアップに対する法務デュー・デリジェンスにおける留意点――スタートアップが事前に整えておくべき事項
第5章 スタートアップと大学とのオープンイノベーション
1 産学連携における留意点
2 大学からライセンスを受ける場合
3 大学と共同研究を行う場合