欧州特許庁で、基礎出願とPCTで異なる出願人名義の際の優先権適格性について、拡大審判部に質問が付託されたそうです。
こちら米国を基礎とする出願で起こりがちだったことですが、pre-AIAでは米国は出願時に発明者から企業等に出願を譲渡できなかったため、下記のように優先権の基礎となる出願人は発明者A名義となります。一方でPCT出願等する際には、米国以外では出願時に発明者から企業等に出願を譲渡できますので、例えば会社Bを出願人とすることができます。
ここで、見て頂きたいのは、基礎出願と優先権を伴う出願で出願人が異なる事態が生じています(下記では出願人Aと出願人B)。欧州特許庁では原則出願前に権利譲渡等をし出願人を基礎出願と優先権を伴う出願で合わせておくことが求められています(下記では出願人Aでそろえるか、出願人Bでそろえるかの何れか)。米国発の出願ではこの手続きが蔑ろになっていて優先権の適格性が否定されるということが起こりえます。今回も同様の事象が問題となっています。
拡大審判部に付託された質問の内容は下記になります。CRISPR特許などでもこちらが論点となっていた件があったので興味深い論点ですね。
I. Does the EPC confer jurisdiction on the EPO to determine whether a party validly claims to be a successor in title as referred to in Article 87(1)(b) EPC?
II. If question I is answered in the affirmative
Can a party B validly rely on the priority right claimed in a PCT-application for the purpose of claiming priority rights under Article 87(1) EPC
in the case where
1) a PCT-application designates party A as applicant for the US only and party B as applicant for other designated States, including regional European patent protection and
2) the PCT-application claims priority from an earlier patent application that designates party A as the applicant and
3) the priority claimed in the PCT-application is in compliance with Article 4 of the Paris Convention?
原審である審判部の決定は下記になります。
EPO - T 1513/17 (Prolongation of survival of an allograft/ALEXION) of 28.1.2022
EPO - T 2719/19 (Prolongation of survival of an allograft/ALEXION) of 28.1.2022