先日も欧州単一特許・欧州統一特許裁判所について投稿しましたが、欧州単一特許・欧州統一特許裁判所もいよいよ現実味を帯びてきました。
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ここで、欧州単一特許はEU法に関するため、その規則の解釈においては欧州司法裁判所が統一的な判断をすることになります。
今まで特許は、EPCや国内法がメインで、バイオ指令、SPC、エンフォースメント指令、"Bolar"例外などEU法がかかわる場面は少なかったですが、今後はよりかかわることが増えることが予想されます。
一方で、多くの人に欧州司法裁判所の仕組みや実態はわからないことが多いのではないのでしょうか。それもそのはずで、筆者の理解する限り、日本において欧州司法裁判所を解説した書籍はほぼない状況でした。
そんな状況のなかついに待望の一冊が出ました。
一橋大学でEU法の研究をされている中西 優美子先生が書いた「EU司法裁判所概説」です。ページ数も194ページとコンパクトで概要を理解するにはよく、お値段も1980円とお手頃になっています。欧州司法裁判所を解説するほぼ唯一の書籍で、歴史、仕組み、裁判手続き、裁判の種類など概要が分かりやすくまとまっていました。
今後の欧州司法を先取りする書籍として、非常にお勧めの一冊でした。
中西 優美子
信山社出版 2022年01月31日頃
出版社からのコメント
EUの主要機関である、EU司法裁判所(欧州司法裁判所〔Court of Justice of the European Union〕)に関して、組織、手続、訴訟形態、EU法の解釈方法など、その全体像を平易かつ具体的に解説。基本的な内容から始めつつ、重要判例の紹介等、発展的事項も説明。また、〈コラム〉や、具体的な数字から裁判所の活動がイメージできる「司法統計」に関する章、末尾には「裁判所の判決文の実例」も掲載した充実の書。
◆EU司法裁判所の全貌を、平易かつ具体的に解説◆
【目次】
◆第1章 EU司法裁判所とは
1 ルクセンブルクにあるEU司法裁判所へアクセス
・コラム:EU司法裁判所の建物
2 欧州司法裁判所(現EU司法裁判所)の設立
3 EU司法裁判所の改革
4 裁判所の手続を定める文書
5 EU司法裁判所の構成
6 司法裁判所の裁判官
・コラム:司法裁判所の長官について
・コラム:初期の裁判官
7 法務官
8 司法裁判所の法廷の構成
コラム:公正な裁判を受ける権利と裁判官
9 一般裁判所
10 司法裁判所にかかわる人々
◆第2章 EU司法裁判所の手続
1 基本的な記号の意味
2 言 語
・コラム:EUの公用語
3 裁判所における手続
4 訴訟の迅速化
5 上訴
6 一時的な措置
7 その他手続にかかわる事項
・コラム:EUと管轄権
◆第3章 EU司法裁判所の訴訟形態
1 先決裁定手続
・コラム:憲法裁判所の創設の必要性?
2 条約違反手続と判決履行義務違反手続
3 合法性審査・取消訴訟
4 不作為確認訴訟(EU運営条約265条)
5 EU損害賠償責任訴訟または不法行為責任(非契約上の責任)訴訟
6 職員訴訟
7 裁判所意見
◆第4章 EU司法裁判所の解釈
1 EU法の解釈
2 解釈と適用
3 司法積極主義
・コラム:司法積極主義か?
4 判例法の意義
5 判決のスタイル
◆第5章 EU司法裁判所における事件統計とデジタル化
1 事件統計
2 EU司法裁判所におけるデジタル化
・参考文献
【付録】裁判所の判決文の実例