2021年6月第四次専利法(中国の特許法)改正により、中国では、薬事承認機関が、ジェネリック医薬品承認に際し、先発医薬品メーカーの特許の存在を考慮するパテントリンケージ制度を導入しました。
一方で、特許関係の行政判断は判断は特許庁が行いますが、薬事承認等の行政判断は薬事承認機関が担いますので、パテントリンケージを機能させるためには両者の役割分担や必要な情報の取扱い等を法律等で定める必要があります。
詳しい制度などは下記などが参考になりそうです。
【特許・意匠ニュース】中国、パテントリンケージ制度の実施弁法の公表 | NGB株式会社
さて、今回北京知的財産法院が2021年6月第四次専利法(中国の特許法)改正でパテントリンケージ制度が導入されてから、初めての判決を行ったという公表をしました。
本件は中外製薬の骨粗鬆薬Edexcel Soft Capsuleに関連する事件で、現地の"温州海鹤药业有限公司"がジェネリック薬の申請をするとともに中外特許を非侵害とする宣言をしていたことから、中外製薬がパテントリンケージ制度に則り当該ジェネリック薬が自社特許を侵害しているかの確認訴訟を提起したことから始まった事件のようです。
なお、中外製薬の特許は第200580009877.6号で、CN1938034Bとなるそうです。
CN1938034B - ED-71 preparation - Google Patents
結論として、北京知的財産法院は今回のジェネリック医薬品は中外特許CN1938034を侵害しないと判断したようです。
理由として、下記を挙げています。
北京知识产权法院经审理认为:
涉案仿制药使用的技术方案与涉案专利权利要求1的技术方案既不相同,亦不等同,故该技术方案未落入涉案专利权利要求1的保护范围。鉴于权利要求2-6为权利要求1的从属权利要求,在涉案仿制药的技术方案未落入权利要求1的保护范围的情况下,其亦不落入权利要求2-6的保护范围。据此,原告有关涉案仿制药落入涉案专利权利要求1-6的保护范围的主张不能成立,法院不予支持。
原告当庭表示将会上诉,被告表示服从一审判决。
仮約してみると、ジェネリック医薬品の技術的課題が中外特許のものとことなるため、侵害しないという理由になるようです。
After hearing the case, the Beijing Intellectual Property Court held that
The technical solution used in the generic drug in question is neither identical nor equivalent to the technical solution of claim 1 of the patent-in-suit, so the technical solution does not fall within the scope of protection of claim 1 of the patent-in-suit. Since claims 2-6 are dependent claims of claim 1, if the technical solution of the generic drug does not fall within the scope of protection of claim 1, it also does not fall within the scope of protection of claims 2-6. Accordingly, the plaintiff's claim that the generic drug in question fell within the scope of protection of claims 1-6 of the patent in question could not be established and was not supported by the court.
The plaintiff indicated in court that it would appeal and the defendant indicated that it would obey the first instance judgment.
北京知的財産法院の発表によると中外製薬は上級審への上訴をすることを検討しているようなので、今後もこちらの新しい制度がどのように動いていくのか知るよい事件になりそうですね。
余談ですが、日本語で中国の最新の特許法改正を解説する書籍は出ていないようです。
ここはビジネスチャンスかもしれないですね。
下記のジュリストなどには特集記事があったりします。