気になった特許の話題 -Patent Topics Explorer-

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日本: 特許庁政策推進懇談会の報告書が発表される

 

以前から、特許庁政策推進懇談会の話題を投稿していましたが、ついに報告書が発表されたそうです。

 

www.jpo.go.jp

 

 

以下、気になるトピックをのぞいていってみようと思います。実際こちらの報告書に基づいて今後どのような動きがあるのかは今のところ不明ですが。。。

 

 

(1)AI、IoT 時代に対応した特許の「実施」定義見直し

 

おそらく複数主体や域外適用の問題に対して、検討した方がよいということでしょうか。

 

・AI、IoT 時代に対応した特許の「実施」定義見直しについては、プログラムに関する発明を特許により適切に保護できるよう、サービスの提供形態、属地主義の観点等を考慮し、現行制度の解釈の限界にも留意しつつ、具体的な法改正の在り方について検討を深める必要がある。

hokoku.pdf (jpo.go.jp)

 

 

 

(2) NFT 化した画像データの意匠権保護

 

やはり意匠権で保護すべきか等含めて参加者からも疑問が呈されたようで、中長期的に検討を進めるという、現状注視ということですかね。

 

メタバース内の画像の保護に関しては、関係する法令に基づき、模倣行為に対して取り得る方策やその限界についての議論の整理を進め、クリエイターの創作活動に対する萎縮的効果を生じさせないよう十分考慮しつつ、意匠権等による保護の在り方について、中長期的視野で検討を深める必要がある。

hokoku.pdf (jpo.go.jp)

 

 

 

(3) 懲罰的損害賠償/利益吐き出し型損害賠償

(4) 損害賠償の過失推定規定

 

こちらも文言見ると様子見ですかね。

 

・懲罰的損害賠償/利益吐き出し型損害賠償については、今後の国内外の裁判例等を引き続き注視する必要がある。

・過失推定規定における「過失」については、事例の類型化を行い、特許権者と被疑侵害者双方のバランスに留意しつつ、「過失」を推定することが酷といえる場合があるか、諸外国の事例等についてさらに分析を進める必要がある

hokoku.pdf (jpo.go.jp)

 

 

 

(5) 共有特許の考え方の見直し

 

こちらは知財推進計画2022で共有特許の考え方の見直しを検討せよとあり、注目していました。

www.patent-topics-explorer.com

 

こちらの報告書をみると特許庁としては、73条を直ちに改正すべきという考え方ではないんですかね。基本的には契約で対処すべきという考え方なのかもしれません。

 

検討の方向性
特許法の共有特許の規定は、大学のみならず、中小企業等、共有特許を有するすべての主体に影響を及ぼすものであるところ、特に、中小企業等への影響に鑑みれば、ただちに特許法第 73条 3 項の改正により対処すべきとはいえない。
・なお、大学固有の課題に関しては、知的財産推進計画 2022 において「大学等における共同研究成果の活用促進」とされており、特許庁として期待された役割を果たしていく。特許庁は、大学が当事者のモデル契約書を 2022 年3月に公表しており、大学と企業との共同研究契約において、企業(事業会社)が正当な理由なく一定期間不実施の場合に、大学が企業の同意なくして第三者にライセンスできる旨規定することを推奨しているところ、このようなモデル契約書の周知を図り、その実行の徹底を推奨していくことが必要である

hokoku.pdf (jpo.go.jp)

III. まとめ

共有特許の考え方の見直しについて、大学固有の課題に関する知的財産推進計画 2022 の提言「大学等における共同研究成果の活用促進」に則りつつ、中小企業等も含めた共有特許全体の考え方については、適切な契約が行われるよう、モデル契約書の周知等の取組を続ける必要がある

hokoku.pdf (jpo.go.jp)

 

 

(6) 中小企業の減免措置の見直し

 

実体としては下記の事情があったそうです。

 

平成 31 年4月から、これまで一部の中小企業が対象だった特許料等の軽減措置を全ての中小企業に拡充した。また、減免申請時に要件に該当することの証明書類等の提出を不要とし、手続を大幅に簡素化した。令和2年度の審査請求料の減免申請の実績を見ると、申請件数が年間1~9件の申請人が 14,093 者である一方、年間 1,000 件超の申請人が4者、年間 100~999 件の者が 25 者存在しており、一部の者が大企業並みの審査請求を行い減免措置の適用を受けている実態がある。

hokoku.pdf (jpo.go.jp)

 

結論としては減免の上限を定めることを検討するようです。

一方、この減免適用の多い4者や25者がどんな企業かは大事だと思います。本来減免制度により審査請求数の増加を意図している企業であったならば施策としては大成功なので、そこの検討なしに一部多用がする人がいてずるいから一律上限という悪しき平等主義はよくないなとは思います。

 

減免制度の見直しについては、申請者・特許庁双方の手続・事務の簡素化を図ってきた経緯や制度利用者への影響を留意しながら、審査請求料の減免申請の年間の適用件数に上限を設けることを早急に検討する必要がある。

hokoku.pdf (jpo.go.jp)

 

 

 

(7) 審判・裁定の料金改定

 

こちらは値上げの方向性で動きそうですね。

 

審判関係料金等の見直しについては、産業界をはじめとするユーザーの皆様の御意見を踏まえ、実費や欧米の料金水準との比較に基づき裁定・判定請求手数料額の見直しの必要性を慎重に検討する必要がある

hokoku.pdf (jpo.go.jp)