AI契約レビューにあたって問題となるのが、弁護士法72条に違反しないかというところがあります。
下記にもありますが、非弁護士の方は、報酬を得る目的で、法律事件に関して法律事務を取り扱うこと等は、原則禁止されています。
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
業界に衝撃が走ったのは今年6月の経産省グレーゾーン解消制度の法務省回答でした。
下記にもあるように72条違反の可能性があると回答が出たからです。
さて、経産省のグレーゾーン解消制度で、法務省回答がネガティブなものが出て、ふたたび衝撃となりそうです。
事業名及び申請事業者 | 省内担当課室 | 申請日及び回答日 | 公表資料 |
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リスク検出による適切な契約管理サービスの提供 【申請事業者】 リスク検出による適切な契約管理サービスの提供を検討する企業
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商務・サービスグループ サービス政策課 |
【申請日】 令和4年9月16日 【回答日】 令和4年10月14日 |
法務省回答(PDF形式:153KB) ※回答内容については規制所管官庁である法務省にお問合せください。 照会書(PDF形式:272KB) |
契約書レビューサービスの提供 【申請事業者】 契約書レビューサービスの提供を検討する企業
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商務・サービスグループ サービス政策課 |
【申請日】 令和4年9月16日 【回答日】 令和4年10月14日 |
法務省回答(PDF形式:182KB) ※回答内容については規制所管官庁である法務省にお問合せください。 照会書(PDF形式:262KB) |
「契約書レビューサービスの提供」の照会では、「AIレビュー型機能制限版」という限定した機能の場合の弁護士法72条違反のコメントを踏み込んで求めていて興味深いです。
特に、限定した解説では、理由すべき特徴的な表現の有無を指摘するもので、法的効果に関する説明を表示しないといったものにするそうです。
AIレビュー型(①-1)の機能のうち、レビュー対象契約書の条項等についての解説のみが表示される。この解説は、条項等のうち、レビュー方針との差がある部分について、一般的に留意すべき特徴的な表現等の有無を指摘するもの(例えば、損害賠償に関する条項につき「故意又は重過失がある場合に限り」との記載があることなどを指摘)であり、法的効果に関する説明は表示しない。
法的効果の解説が出ないと、文言の違いが何故生じたかの法的知識が必要になってしまうので、サービスと魅力は減る可能性がありますが、背に腹は代えられないという感じですかね。
しかし、そこまで譲歩しても法務省回答はダメな可能性があるという回答になってしまています。
①-2の機能において契約書のレビュー結果として表示される解説は、レビュー対象契約書の条項等に係る法律効果を前提として、当該条項等のうち法的に留意すべき箇所を指摘するものであり、これは法律上の専門知識に基づいて法律的見解を述べるものとして「鑑定」に当たると評価される可能性がある。
また、自社ひな形を参照する仕様にしたり、さらにそこから自身で設定した留意事項の表示に制限できる仕様にしても回答は同じようでした。
最後に、サービスの提供方法等を限定する場合も照会されていますが、、、
⑹ サービスの提供方法等の限定等
ア レビュー対象契約書をサービス利用者の契約書のひな形と「事件性」が高いものを除いた契約書のみとする。契約書のひな形であるか否かは、契約書上の契約日付、相手方当事者、金額等の具体的な内容が記載されているか否かで判定し、「事件性」が高いか否かは契約類型で判定する。
イ 本件サービスの利用料を無料とした上で、本件サービスの利用者に対して照会者の他のサービスの広告、宣伝を行ったり、本件サービス上から他のサービスへの導線を作ったりする。
ウ 利用者を弁護士又は弁護士法人に限定する。
エ 本件サービスを利用するに当たって、利用者の社内弁護士の監督があることを条件とする。具体的には、利用規約その他の合意において、社内弁護士が本件システムの利用に確実に関与すること、少なくともアカウントの一つを社内弁護士のものとすること、アカウント発行に際して弁護士登録番号の入力を求めて社内弁護士の在籍を確認することを明確にする。
こちらも一概に判断できない等といった形で、白とは言ってもらえなかったようです
ア レビュー対象契約書を限定する場合
前記⑵のとおり、弁護士法第72条本文の「その他一般の法律事件」該当するか否かは、個別具体的な事情を踏まえ、個別の事案ごとに判断されるべきものであるから、前記3⑹アのとおりレビュー対象契約書を限定することとしても、本件サービスが「その他一般の法律事件」を扱うものに当たらないと一概に判断するのは困難である。
イ 本件サービスの提供価格を無償とする場合
前記3⑹イのとおり、本件サービスの利用料を無料とした上で、他のサービスの広告、宣伝のみを行う場合であっても、個別具体的な事情の下で、本件サービスが当該他のサービスと一体のものとして当該他のサービスの利用料が本件サービスとの間で間接的な対価関係があると評価される可能性は否定できず、弁護士法第72条本文の「報酬を得る目的」がないと一概に判断するのは困難である。
ウ 本件サービスの利用者を弁護士又は弁護士法人に限定する場合
前記3⑹ウのとおり本件サービスの利用者を弁護士又は弁護士法人に限定する場合、当該弁護士又は当該弁護士法人がその業務として法律事務を行うに当たって本件サービスを補助的に利用するものと評価されるときは別として、個別具体的な事情の下で当該弁護士又は当該弁護士法人がその業務として法律事務を行うに当たって本件サービスを補助的に利用するものではないと評価されるときは、本件サービスの利用者が弁護士又は弁護士法人に限定されていることをもって同条本文該当性が否定されることにはならないものと考えられる。
エ 利用者の社内弁護士の監督があることを条件とする場合
前記3⑹エのとおり、本件サービスの利用契約等において、利用者の社内弁護士の監督があることを条件としたとしても、このことをもって弁護士法第72条本文の各要件該当性が否定されることにはならないものと考えられる。
契約レビューはリーガルテックの中でも非常に需要が大きい分野かと思いますが、今後の動向はどうなるのか注目ですね。