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欧州: [心・証・開・示] Post-published evidenceが考慮される基準についての拡大審判部の心証が口頭審理前に開示される

 

現在、欧州特許庁の拡大審判部では、進歩性の主張にあたり、出願後の実験成績証明書の提出の基準が争われています。特に、近年その基準は"plausibility"と呼ばれる基準が審判部の判決などで出てきています。

 

事件の詳細は下記や、

www.epo.org

 

JETROの日本語記事をご参照ください。

欧州特許庁EPO)審判部、出願日後に提出された証拠に関する質問を拡大審判部に付託

20211027_2.pdf (jetro.go.jp)

 

 

特に、化学系やバイオ系では予想外の効果がでやすく、進歩性の主張にあたっては、Post-published evidenceの提出が認められ、考慮されるかが、特許をとれるかどうかのカギになる場合も多くあります。

 

 

そして、口頭審理が、現在2022年の11月に予定されています。

www.patent-topics-explorer.com

 

 

さて、こちらの口頭審理前に、拡大審判部が通知をだしました。

こちらです!

 

register.epo.org

 

 

それぞれの通知の項目をざーっとみてみようと思います。

 

(1) Admissibility of the refferal 

 

今回の拡大審判部の判断は、進歩性の効果を示すためのpost-published dataの使用可否の部分に限ることが述べられていると思われます。

 

 

(2) Question 1「効果の立証が専ら後出しの証拠に基づいているという理由で、その証拠は無視されるべきという、自由心証主義(例えばG 3/97理由5及びG 1/12理由31を参照)の原則に対する例外は認められるべきか?」

 

通知の内容をみると、こちらについては原則認められると現在拡大審判部は考えていそうです。

 

the principle of free evaluation of evidence does not appear to allow disregarding evidence per se insofar as it is submitted and relied upon by a party in support of an inference which is challenged and is decisive for the final decision. Disregarding such evidence as a matter of principle would deprive the party submitting and relying on such evidence of a basic legal procedural right generally recognised in the contracting states and enshrined in Articles 113(1) and 117(1) EPC.

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(3) Question 2「(Q1の)その答えがyesである(その効果の立証が専ら後出しの証拠に基づいている場合には、その証拠は無視されるべきである)場合、本件特許出願中の情報又は技術常識に基づいて、本件特許出願の出願日における当業者が、その効果をもっともらしい(plausible)と考えたであろう場合(ab initio plausibility)には、その後出しの証拠は考慮され得る(と考えてよい)か?」

(4) Question 3 「1番目の質問に対する答えがyesである(その効果の立証が専ら後出しの証拠に基づいている場合には、その証拠は無視されるべきである)場合、本件特許出願中の情報又は技術常識に基づいて、本件特許出願の出願日における当業者が、その効果をもっともらしくない(implausible)と考える理由がなかったであろう場合(ab initio implausibility)には、その後出しの証拠は考慮され得る(と考えてよい)か?」

 

 

これらの質問に対して、まず質問1で証拠は原則考慮すべきとしましたが、今回の進歩性の効果を認定するためのpost-published dataを考慮することについて、ガイダンスを出す必要があると拡大審判部は認識しているようです。

 

Notwithstanding the aforementioned considerations in respect of the principle of free evaluation of evidence, the Enlarged Board accepts that the gist of the matter underlying the present referral gives rise to the need to provide some guidance on the issues referred to in questions 2 and 3.

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その上で、進歩性の効果の認定に際してpost-pulished dataを考慮するかは、「当業者がそのデータについて「significant reason to doubt it」を有するかをクライテリアにすることを仄めかしています。

 

whether the skilled person, having the common general knowledge in mind, would have had any significant reason to doubt it.

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なお、今回の拡大審判部の審理に当たっては進歩性のおけるpost-published dataについての議論に限られており、記載要件などは審判部で認められおり審理の対象となっていないため、拡大審判部はサポート要件などは満たすという前提で判断することに注意がいるかと思います。

 

 

さて、このような心証を持つ拡大審判部ですが、今後口頭審理を経て、どんな決定を出すのか楽しみですね!