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日本: 【続報】DABUS案件の日本での行政不服審査の裁決がでる。

 

先日に日本のDABUS案件で日本での行政不服審査会の答申が出たことを速報し、こちらに沿った裁決がでるだろうという投稿をしました。

 

www.patent-topics-explorer.com

 

 

こちら2022年10月12日に裁決が出たそうです。審査請求段階では、DABUSというAIを発明者の欄に記載することは、認められないという結論になりました。発明者の「氏名」は、自然人の「氏名」に限られると解されるからです。

 

理由は行政不服審査会の答申に沿ったものかと思われました。

 

 

 

今後、本事件が裁判所へ出訴などされるのか注目されるところです。

 

 

裁決の引用はこちらです。

 

〇 事案の要旨
 本件は、特許協力条約に基づく国際出願(本件国際出願)をした審査請求人が、国内移行手続としてした特許法(法)184条の5第1項所定の書面及び法184条の4第1項所定の明細書、請求の範囲、図面及び要約の日本語による翻訳文に係る提出手続(本件手続)についてなされた出願却下の処分(本件却下処分)が違法又は不当であると主張して、その取消しを求める事案である。

○ 審査請求人の主張(要旨)
(1) 本件国際出願に係る発明を発明した人工知能(AI)は、人によって方向付けられた課題又はデータを用いなくても、自律的に発明を行うことができるものである。このようなAIによる発明に関する手続を認めないということは、AIによる発明の特許出願を行うことができず、発明の「保護」及び「利用」を図ることができないことになるから、法1条の趣旨に反する。
(2) 特許法上、発明者の明確な定義がない。特許法上で氏名の記載に関する規定があるからといって、発明者が自然人に限定される根拠にはならず、AIが発明者として認められない根拠にもなり得ない。
(3) 法35条3項の規定においては、職務発明の発明者である従業員は、特許を受ける権利を発明の完成と同時に有する主体となっていないから、発明者が発明の完成と同時に特許を受ける権利を有する主体となる必然性はない。また、法33条1項には「『権利は』移転できる」と規定されているだけであり、発明者が移転しなくてはならないとは規定されていない。さらに、法34条1項には、被承継人について何ら規定されておらず、同項をもって、被承継人について、権利能力を有し、かつ自然人であるというように解釈することは妥当でない。現行法の解釈は、AIが発明者となりうる可能性が生じる前になされたものであることを踏まえれば、AIから権利の承継が成立すると考え、AIの管理者に特許を受ける権利を取得させて出願の手続を可能と解釈すべきである。
(4) 一部の国では、発明者の表示にAIを記載した出願が認められてきている。国際競争力の維持・強化を図るためには、日本においてもAIによってなされた発明を特許権により保護することが必要である。

〇 裁決の理由
(1) 特許庁長官は、本件手続について、法184条の5第2項3号、特許法施行規則(施行規則)38条の5第1号の規定する方式に違反していること及び法195条2項の規定により納付すべき手数料が納付されていないことを理由として、法184条の5第2項3号及び同項5号の各規定に基づき、本件補正指令により手続の補正を審査請求人に命じたが、その後、審査請求人が法195条2項の規定により納付すべき手数料を納付したものの、その他の点については、審査請求人が本件補正指令で指定された期間内に補正をしなかったことが認められ、法184条の5第3項の規定に基づき、本件国際特許出願を却下した本件却下処分は適法である。
(2) 発明者の欄の記載事項について
法184条の5第2項3号、施行規則38条の5第1号に定める国内書面の記載事項については、法184条の5第1項各号の規定を基にしている。同項各号においては、出願人については「氏名又は名称」と規定されているのに対し(同項1号)、発明者については「氏名」とのみ規定されている(同項2号)。法令上「人」とは自然人と法人を示す(例えば、法令用語研究会編「有斐閣・法律用語辞典(第4版)」966ページ参照)ことから、同項1号に規定される「出願人」の「氏名又は名称」は自然人の氏名と法人の名称を指していると解することができる一方で、同項2号の「氏名」について自然人の氏名に限られないとするのは合理的ではない。
 また、そもそも「氏名」という語は、特許法に限らず、法令上、自然人について用いられる語であることから(例えば、角田禮次郎ほか編「法令用語辞典〈第10次改訂版〉」738ページ参照)、法184条の5第1項2号の発明者の「氏名」とは、自然人の「氏名」を指すと解するのが合理的であり、施行規則様式第53の【発明者】中の【氏名】の欄には、自然人の「氏名」を記載すべきということになると解される。
(3) 審査請求人の主張について
審査請求人は、前記の主張をするが、法35条3項の規定は、職務発明について、契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときにおいては、その特許を受ける権利は、その発生した時から当該使用者等に帰属すると定めているところ、これは、あくまで、上記のような定めを設けた場合にだけ、例外的に、使用者等への原始帰属を認めるものであり、同項によって、発明者に特許を受ける権利が帰属するという特許法上の原則が変更されたものではない(中山信弘等編「新・注解特許法〔第2版〕【上巻】」602ページ)。
 また、法29条1項、33条1項、34条1項の各規定は、発明者が発明をしたときに特許を受ける権利を取得することを前提に、発明者ないしその発明者から特許を受ける権利を承継した者のみが特許を受けることができる規定になっているものと解される。これは、発明という行為が自然人の行う事実行為である(例えば、中山信弘著「特許法〔第4版〕」45ページ、前掲「新・注解特許法〔第2版〕【上巻】」694ページ参照、実用新案法上の考案者について判示したものとして東京地裁昭和30年3月16日判決・下民6巻3号479ページ参照)とされることにも整合しており、これらの規定からも、法184条の5第1項2号の発明者の「氏名」は、自然人の「氏名」に限られると解するのがやはり合理的である。
したがって、審査請求人の主張は採用できない。
(4) 以上の次第で、本件却下処分は適法かつ妥当であり、本件審査請求は理由がないから、行政不服審査法45条2項の規定により、棄却するのが相当である。