気になった特許の話題 -Patent Topics Explorer-

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インド: 補正の根拠となるのはクレームだけか?明細書もありか?

 

日本の実務をしているとタイトルの答えは、当然明細書に書かれた事項も補正の根拠になるだろうと思いますが、なんとインド特許庁は補正はクレームに書かれた事項しか認めないとして拒絶した事例があったそうです。

 

www.iam-media.com

 

 

 

さて、拒絶査定となった場合、今までは行政機関であるインド知的財産審判委員会IPABに不服申し立てをする形でしたが、2021年に突如廃止されまして、高裁に直接上訴しなければならないこととなりました。

 

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この件も出願人であるAllerganは不服を申し立てましたが、現在のプラクティスに則り、デリー高等裁判所に上訴しています。

 

 

本件は、デリー高等裁判所が補正の根拠はクレームだけでなく明細書も含むと判断しています。

 

The court disagreed with this position and espoused the view that patent law is intended to foster innovation, research, technology and industrial progress. Accordingly, the Patents Act’s provisions should not be interpreted in an unduly restricted manner, as that would discourage innovation and entrepreneurship. In the court’s considered opinion, the claims and specification should be read as a whole when evaluating the scope of the amendments. 

Delhi High Court challenges Indian Patent Office’s refusal order in landmark pharma ruling - IAM (iam-media.com)

 

 

そして、事件をインド特許庁に差し戻し、めでたしめでたしという案件になります。

 

The matter has now been remanded back to the Indian Patent Office to accept the amendments and pronounce a decision on the merits.  

Delhi High Court challenges Indian Patent Office’s refusal order in landmark pharma ruling - IAM (iam-media.com)

 

 

 

補正に関しては妥当な判決がされてよかったなというところです。

というのも、インドでは分割については奇怪なプラクティスがまかり通っているからです。

 

 

まず、特許庁分割出願は、親出願の請求項に記載されたものでないといけないとしています。今回の補正の判決と異なり、親出願の請求項にかいておらず明細書のみに記載の発明は分割できません。

 

インドでは分割出願が文字通り複数の発明を分けるものという意味合いで利用されており、親出願に記載されていなかった請求項を分割出願で新たに用意するといったことは認められていない。この結果、他国の分割出願で認められている請求項がインドでは認められないことが少なくないため注意が必要である。この点について以下に解説する。


インド特許庁のマニュアルである”manual of the Patent office practice and procedure”によると、分割出願の請求項は first mentioned application の請求項に基づくものでなければならないと規定されている。 

survey1_202205.pdf (jetro.go.jp)

 

 

過去に存在していた審判部のIPABでも特許庁のプラクティスを認める判断が出ています。

 

また IPAB において、分割出願において親出願の請求項に記載されていない請求項を明細書から持ってくることはできないという判決も出ている 9。


"addition of new claims from the description, which were not present in the body of the parent claims, cannot form part the divisional application, as per the teachings of section 16 of the Patents Act".


これより、親出願に明示的に開示された発明の請求項が含まれていない場合には、上記マニュアル及び IPAB 判決から考えて、分割出願で権利化することはできないと考えられる。

survey1_202205.pdf (jetro.go.jp)

 

 

さらに、補正では明細書からでもいいよと言ってくれたデリー高裁ですが、分割出願では態度が違います。過去にデリー高裁もそのようなプラクティスを認める判決がなされており、行政・司法ともに「親出願のクレームに書いてないことは分割出願にいれるな」としています。

 

Patents – Jurisdiction of Competition Commission

L&S-IPR-Amicus-August-2022.pdf (lakshmisri.com)

 

 

 

日本で当たり前のことが当たり前でないのが各国のプラクティスを見ていくときの面白さでもありますが、今後どのようになるかも注目です。