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書評: 統一特許裁判所と欧州単一効特許 実務者ハンドブック

 

久しぶりの書評です。

今回紹介するのは、2023年6月1日から欧州統一特許裁判所と欧州単一特許の運用が核的になりましたので、以下の書評をしようかと思います。

 

 

 

ドイツのUPCAの寄託については下記もご参考です。

www.patent-topics-explorer.com

 

 

こちらの書籍はおそらく現時点で日本語で出版された内容で一番欧州統一特許裁判所と欧州単一特許を開設したものとしてお勧めです。

 

 

書籍を書いたHoffmann Eltleもドイツだけでなく欧州を代表する特許事務所となっています。

www.hoffmanneitle.com

 

 

 

実際に、欧州統一特許裁判所のオプトアウト等の裁判管轄、欧州単一特許に向けた移行期間等の話は解説が多かったと思いますが、実際の運用に向けて出願戦略や訴訟戦略をどう構築するかの示唆が飛んでおり、ドイツとの併用が中心になりますが、パートBは秀逸でした。

 

 

また、国内裁判所と欧州単一特許裁判所に関しては、オプトアウトを進められることが多いかと思います。一方で、欧州単一特許裁判所は、間接侵害やBolar条項に関する事項についてUPCAに規定された実体特許法の規定の制限を受けるため、解釈が異なってくる可能性があるなど訴訟戦略上あえて欧州単一特許裁判所を選んでみようかなと思うメリットも書かれており、非常に参考になりました。

 

 

日本でもドワンゴ v. FC2事件があり、方法クレームの域外適用の論点が話題になりました。欧州でもドイツは緩やかに解釈する一方で、フランスなどは厳格に解釈しているようです。このようにクレーム解釈自体にも欧州内で温度差がありましたが、欧州統一特許裁判所がどのような解釈をしていくかも読んでいて興味が出てきたところです。

 

欧州特許法は、1973年に欧州特許庁が設立されてから、最も大きな変化を現在遂げつつあります。統一特許裁判所については10年前に立法的な基盤が確立されましたが、その後、すべての法的論争やその他の障害を克服し、ついにその設立に至りました。同裁判所は、当初から参加している17のEU加盟国に代わり、2023年初頭以降、特許紛争を審理するための最終的な準備を進めています。統一特許裁判所がスタートすれば、欧州特許庁は、新しく付与される欧州特許をこれら17カ国で単一効力を持つものとして登録することができます。

この複雑な新制度が生み出す課題と機会について、より深く理解することを目指される実務家の皆さまのために、この度、2014年に「EU特許パッケージハンドブック」として出版された実務家向けガイドの第二版を出版することになりました。

本書は、新制度の有効活用に向けて、体系的かつ簡潔に概要を知りたい方を対象としています。第一版の内容を更新し拡充した概要(パートA)と詳細なガイド(パートC)の他に、権利化・オプトアウト・権利行使に関する戦略的考察の章(パートB)を新たに追加しました。

また、次のような課題に直面している国際的な特許業界において、より根本的な理解を促進することを目的としています。

  • 欧州特許を欧州単一効特許として登録するべきか、それとも国内での有効化を維持すべきか?
  • 統一特許裁判所によるリスクを軽減し機会を活用するために、どのように特許ポートフォリオを戦略的に構築すればよいか?オプトアウト、欧州特許庁での分割出願、国内特許出願などの手段は、どのように役立てることができるか?
  • 欧州特許の権利行使や無効化は、各国裁判所と統一特許裁判所のどちらで行うべきか?
  • 一般的に、欧州で訴訟を起こす場合、いつ、どこで行うべきか?