EUの欧州委員会(European Commission)から知的財産に関連する複数の法案が4月末から続々と出てきています。今回は特許期間延長制度について眺めてみようかと思います。
(1) 特許期間延長制度
医薬品では臨床試験等で市販できなかった特許期間を補填する特許期間延長制度が存在しています。EUではSuppremental Procetion Certificate (SPC)と呼ばれるEU法でそちらの延長が実現されています。
一方、何度も記事で書いてきましたが、2023年6月1日からは欧州単一特許と欧州統一特許裁判所の運用が開始されます。
www.patent-topics-explorer.com
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その際の問題点として、SPCはEU加盟国毎現在申請する必要があるところ、欧州単一特許は欧州特許庁での登録後批准国で単一効をもつため、欧州単一特許のSPCをどのように扱うかという問題がありました。
今まで、欧州単一特許に対応する欧州単一SPC (通称unitary SPC)の議論がされてきましたが、そちらの法案が出たそうです。
欧州委員会、補充的保護証明書に関する規則案を発表<PDF>(269KB)
欧州単一特許に対応する欧州単一SPCについての法案がついに出され、欧州単一特許に対するSPCについて、中央申請方式で医薬品が承認されている等の一定の条件を満たすとEUIPOが審査を行い欧州単一SPCを付与するスキームを利用できるようになるようです。
さらに、特定の条件を満たす特許(欧州単一効を有する欧州特許を含む、欧州特許であり、製品を上市する認可を規則(EC)No726/2004、規則(EU)2019/6 又は規則(EC)No 1107/2009に基づく集中手続きにより付与されたもの)について、EUIPO における集中的な審査手続きも導入するそうです。
また、COM(2023)231の20条2項等によると、1項の特定の条件を満たす特許については、従来の国内へのSPC申請はできなくなるように思われます。
Article 20 (COM(2023)231)
2. When the conditions under paragraph 1 are met, the filing of national applications shall be prohibited, in respect of the same product, in those Member States in which that basic patent is in force.
同一製品に複数特許がある場合の制限などについても条文が新設されているので、こちらも確認しておくとよいかもしれません(3条2項(COM(2023)221)、3条3項(COM(2023)231)、6条2項(COM(2023)221)、6条2項(COM(2023)231))。過去のSPCのCJEU判決と合わせて、面白い修正かもしれません。