気になった特許の話題 -Patent Topics Explorer-

気になった特許等の知的財産の話題やニュースをピックアップしていくブログです! This blog is picking up intriguing IP topics including patents, trade secrets etc. !

 

 

米国: Enablementの最高裁判決が出る!!!

 

本ブログでも何度か取り上げてきましたが、バイオ系の機能的クレームに対するEnablement判断の米国最高裁事件です。

 

www.patent-topics-explorer.com

www.patent-topics-explorer.com

 

 

さて、ついに待望の最高裁判決が出てきました。

 

Amgen Inc. v. Sanofi (21-757)
Amgen’s two patent applications—purporting to cover all antibodies that bind and block the PCSK9 receptor involved in LDL cholesterol metabolism—fail to satisfy the Patent Act’s enablement clause, see 35 U. S. C. §112(a).

 

まず、結論としては、Amgen特許はEnablementの要件をみたさず、無効という結論になりました。

 

基本的に新しい規範を出すことはなく、従来のEnablementの判断を引用し、genusな特許のenablementを満たすためには、すべてのspeicesを明細書に記載する必要はないが、reasonableな量のhow to make and useを満たすembodimentを記載する必要があるということを確認し、バイオ系であってもその原則は変わらないということかと思われます。

 

そして、従来の規範を当てはめた際に、Amgen特許はPCSK9に結合する広範な抗体をカバーしようとしているにもかかわらず、その実施例は26ということで、広範なクレームをカバーするにはenablementを満たさないという形かと思われます。

 

どのくらい書けばenablement満たすのかというところはなかなか難しいところがありますが、過去のUSPTOの運用のような新規なタンパクの抗体をとったら、新規タンパクに結合する抗体の権利を実施例の数に関係なくがっぽり取れてしまうという運用は、米国では難しいということが確認されたかと思います(USPTOもすでに運用を変えている傾向はありますが)。

 

一方で、そのほかのバイオ系でも低分子と比較すると広めの権利が取れる傾向がありますが、どこまで実施例や明細書の記載に落とし込まれた権利範囲になっていくのか今後の運用も注目していく必要がありそうですね。