産業構造審議会特許制度小委員会では、来る特許法改正についての議論が行われていますが、今回の焦点の一つがネットワーク関連発明についての特許権の域外適用です。
ソフトウェアなどの発明は現在はインターネットなどのネットワークでその情報処理などが行われていますが、そうすると一部の処理は海外のサーバーでということも起きてくるわけです。そうすると日本の特許権のみですと、海外での一部実施された場合に、捕捉できない可能性があり問題でした。
ついには、ニコニコ動画で有名なドワンゴがもつ特許権でFC2等に訴訟を起こし、最高裁までいき海外での一部実施に対しても日本の特許権のみで特許侵害といえる場合があることが判断されています。
海外経由でも特許侵害、IT時代「抜け穴」塞ぐ ドワンゴ・FC2訴訟で最高裁初判断 - 日本経済新聞
一方で、こちらの最高裁判決が出る前から、特許庁の産業構造審議会特許制度小委員会では、いわゆるネットワーク関連発明についての特許権の域外適用を認める特許法改正をしようとして議論が進んできました。2025年6月4日でもこちらが議論されるそうです(配布資料のP24以降)。
ところが、何をネットワーク関連発明にするか、どこまでの行為について域外適用を認めるか等については議論があるようです。ソフトウェアの分野は日本は先進国の中では特許性が比較的緩やかなので、特許権が取りやすい傾向で、早い話が第三者の特許もごまんと渦巻いており、あまりに域外適用を緩やかにすると侵害リスクも激増する可能性があります。
それも、議論の中で侵害リスクを低減・明確化させるための手段として提案されているものとして、一部の国内実施を必要とすることや、日本での技術的効果や経済的効果を必要とすること等としていますが、ユーザー利用の工程を特許権の権利範囲に強引にいれることで、テクニカルに域外適用が認められる形にもっていくこともできそうで、低減・明確化の効果は乏しくなる可能性もあるかと思われました。
さらにいうと、AIをはじめとして日本はIT分野では米国や中国をはじめ他国に後れをとっているの現状です。正直な話、日本で域外適用を広く認めると、外国の企業などから特許権侵害といわれるリスクもあがり、日本のメリットはそれほどないのでは?という根本的な疑問もあります。
加えて、いまの法改正の内容では、最高裁の判断にプラスアルファの要素が多く出てきて、それが法律となるということで、時流が変わってまた直したいとなると1年以上の時間がどうしても必要になってきます。侵害に関わる部分なので、間違ってましたとして再び改正したとしても遡及適用もなかなか難しい可能性があります。
今年はネットワーク関連発明についての特許権の域外適用の議論がどのようになっていくかも面白そうですね。