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欧州: 動植物の特許性の例外と拡大審決G3/19の後続の審決を追う!

欧州では、専ら本質的に生物学的な方法によって得られる植物又は動物が53条(2)の特許の例外にあたるかが長く争われたいました。欧州特許庁の拡大審判部は例外を狭く解釈し、「審決G2/12及びG2/13において、EPC第53条(b)の下での植物又は動物の生産のための本質的に生物学的な方法の非特許性を、専ら本質的に生物学的な方法により得られる物(products)には拡張しない旨」の審決を出しこのような植物又は動物自体については特許の対象となる解釈をしてきました。しかし、こちらはEU法(EUバイオテク指令)とも抵触しうる解釈でEU内からもEUバイオテク指令ではこのような植物又は動物自体も特許を付与させない解釈がでていました(the Notice on the interpretation of the EU Biotech Directive issued by the EU Commission in 2016)。結果、2020年の拡大審決G3/19で専ら本質的に生物学的な方法によって得られる植物又は動物が53条(2)の特許の例外にあたることが確認されました。

 

一方で、拡大審決G3/19内では新しい解釈は2017年7月1日より前に登録された欧州特許には適用されない旨が述べられていました。さらに、新規則28条についてもOfficial Journal July 2017で、2017年7月1日より適用になる旨が述べられていました。

 

今回問題となった特許EP2373154B1は2016年4月に登録となっていたもので、このような特許で実際にどのような審決がなされたのかが今回のポイントです。

 

注目すべきは、Appealant IIからは、EU立法者の意図はEUバイオテク指令の制定時から変わっておらず、拡大審決G3/19の解釈は誤っており、本特許のクレーム6は53条(2)で無効にされるべきといった趣旨の主張がされていました。

 

一方で、審判部は、①EUバイオテク指令の解釈は直ちに欧州特許条約53条(2)の解釈を導かないこと、②EU法の解釈はCJEUに委ねられており欧州委員会EUバイオテク指令の解釈の通知は法的な拘束力を有さないこと、③拡大審決G3/19時点でこれらの動植物を特許の例外にすべきCJEU判決は出ていなかったこと、④EPOEU法に必ずしも拘束されないこと、などを理由として、2017年7月1日よりも前は先の拡大審決G2/12及びG2/13に従い特許性の例外とならない旨の結論を出しました。

 

今回審判部は、専ら本質的に生物学的な方法によって得られる植物又は動物の特許性について2017年7月1日をクライテリアに判断しているようです。

 

www.epo.org

 

[関連情報]

 

Claim 6 of EP2373154B1

A barley plant, or part thereof, wherein the barley plant carries a mutation in the gene encoding methionine-S-methyltransferase (MMT) that causes a total loss of MMT function.

 

欧州特許条約 

第 53 条 特許性の例外

(b) 植物及び動物の品種又は植物又は動物の生産の本質的に生物学的な方法。ただし,この規定は,微生物学的方法又は微生物学的方法による生産物については,適用しない。

 

欧州特許付与に関する条約の施行規則 

規則 28 特許性の例外

(2) 第 53(b)に基づき, 欧州特許は, 本質的に生物学的方法によってのみ取得された植物ま
たは動物には付与されない。

 

植物及び動物の特許性についての質問に対する欧州拡大審決(G3/19)

EPO拡大審判部の公表によれば、欧州特許条約(EPC)第53条(b)の下での特許性の例外に動的な解釈を適用し、植物又は動物の生産のための本質的に生物学的な方法の非特許性は、専ら本質的に生物学的な方法によって得られる植物又は動物にも拡張され、本質的に生物学的な方法によって得られる植物及び動物は特許性がない旨結論づけた、としている。

 

欧州特許庁拡大審判部、植物及び動物の特許性についての質問に対する意見を公表 (2020年5月15日, JETRO)

https://www.jetro.go.jp/ext_library/1/_Ipnews/europe/2020/20200515.pdf

 

Official Journal July 2017

www.epo.org