以前、特許査定のクレームの文言と明細書の文言を適合させる運用について矛盾した欧州特許庁審判部の審決が出ていることを紹介しました。
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こちらについて、さらに最近の情報が下記ブログで紹介されています。
誤解を恐れずに書くならば、今回の新しい判断までの経緯は大体こんな感じです。
2021年
欧州特許庁:2021年版の審査ガイドラインを作ったで~。特許許可時のクレームと明細書の内容が適合しない場合はビジバシ削除させるで~。
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審判部T 1989/18:いやいや、そこまで求める法的根拠ないやろ
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2022年
欧州特許庁:2022年版の審査ガイドラインや。いくつか修正したが今までと考え方は変わっとらん。しかし、特許許可時のクレームと明細書の内容が適合しない場合は、明細書の適合しない箇所を明確にする修正をすることでもよかったんやで。
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審判部T 1024/18 :明確性を特許法(欧州特許条約)が求めることを理由に、特許許可時のクレームと明細書の内容が適合は求められているんやで。適合しない場合は、削除か適合しない箇所を明確にする修正をする必要があるんやで
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審判部T 2766/17、T 2293/18、T 1989/18:T 1024/18と同様に、明確性を特許法(欧州特許条約)が求めることを理由に、特許許可時のクレームと明細書の内容が適合は求められているんやで
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(絶望)
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審判部T 1444/20 :クレームを読んで明確にわかるんだったら、明細書の中にクレームに似たような表現があっても明確性はみとめられるんちゃうん(今ここ)
審判部T 1989/18の審決で現在の欧州特許庁審査部の運用に疑義が呈されましたが、その後審決(T 1024/18 、T 2766/17、T 2293/18、T 1989/18)では欧州特許法条約の明確性要件を根拠に運用を認める審決が相次いでいました。
結局この話は認める方向で収束していくかと思いきや、新たな観点から運用を否定する審決(T 1444/20 )が出てきました。
欧州特許庁審判部内でも意見が割れているようで、今後の動向を注視していく必要がありそうですね。
欧州統一特許もまじかに迫ってきましたし、欧州特許の日本語での解説本の新しいものもそろそろ出てほしいですね!