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欧州: EU司法裁判所が「特許の有効性が一審で確認されていない状態で仮差し止めは認められないという判断は排除されるべき」と判断

 

EU司法裁判所が、特許に関連して新しい判断を示しました。

 

 

今回の事件ですが、ドイツのミュンヘン地方裁判所からの「特許がまだ第一審の異議申し立てや無効審判を経ていない状態で、裁判所が仮差し止めなどの仮処分を拒否することが、EU法のエンフォースメント指令第9条に適合するか」という質問に回答したものになります。

 

 

まず、結論としては下記にあるように、「問題となる特許の有効性が、少なくとも、異議申立や無効訴訟において一審で与えられた決定によって確認されていない場合、仮差し止めなどの仮処分は原則認められないという判断は認められない」という判断がされました。

 

Article 9(1) of Directive 2004/48/EC of the European Parliament and of the Council of 29 April 2004 on the enforcement of intellectual property rights must be interpreted as precluding national case-law under which applications for interim relief for patent infringement must, in principle, be dismissed where the validity of the patent in question has not been confirmed, at the very least, by a decision given at first instance in opposition or invalidity proceedings.

https://curia.europa.eu/juris/document/document.jsf?docid=258493&text=&dir=&doclang=EN&part=1&occ=first&mode=DOC&pageIndex=0&cid=561022

 

 

今回の事件は、ドイツの訴訟制度の特殊性に起因しており、こちらはパテントトロール等がドイツを訴訟地として選択する一要因となっているため、注目すべき事件になります。

 

 

ドイツは、特許侵害訴訟と特許無効訴訟が、別々の裁判所で審理されます。

そして、特許無効訴訟の結論が出るタイミングが、特許侵害訴訟が出るタイミングより遅いため、本来は無効の範囲であっても仮差し止めなどの仮処分が特許侵害訴訟で起こってしまうという問題点がありました。

 

 

特に、ドイツでは仮差し止めなどの仮処分を出す前提に、異議申立や無効訴訟の一審で特許の有効性が示されていることは不要とする裁判例もあることから、一審の判断を待たずして仮処分が出ていました(Munich地裁など)

また、ドイツの地裁によっても特許の有効性についの一審の判断を待つかの厳格性が異なり、どの地裁を選ぶかの選択基準の一つになっていたようです。

 

 

今回の判決は、少なくとも特許の有効性についての一審の判断を待つことがEU法上必要ということが認められなくなったため、ドイツ裁判所間の判断の違いは是正されるんでしょうかね。

 

 

 

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