2022年に中国で第4次専利法改正が施行され、先発医薬品の特許権と後発医薬品の承認を調整する制度として、パテントリンケージ制度*1が創設されました。
過去の投稿でパテントリンケージ制度に基づく、初めての北京高等人民法院の判決があったことを投稿しました。
www.patent-topics-explorer.com
今回上記の事件が、中国最高人民法院に上訴され、最高人民法院の判決が出たそうです。
上記のプレスを読んでいて、興味深かった点を下記でメモしてみました。
(1) パテントリンケージ制度で、先発会社特許権を後発品が侵害するか判断する資料は何か。
パテントリンケージ訴訟において、特許権の権利範囲に属するか否かの判断は、後発品の承認申請資料に基づいて行われることを明言しているようです。
実際に販売される後発品と、承認申請資料に記載された後発品の仕様が同一かは、国務院薬品監督管理部門に審査の責任があることが理由のようです。
Therefore, whether the technical solution actually implemented by a generic drug applicant is the same as the application materials is generally not within the scope of examination to confirm that the dispute falls within the scope of patent protection.
(2) 均等論の判断方法
更に、均等論の適用*2についても、包帯禁反言の原則*3等が適用され特許権の範囲が狭く解釈されたときには、技術の課題・解決手段の同一性は判断しなくてもよいという判断が示されています。
If the conditions for limiting the application of the principle of equivalence are met, there is usually no need to judge whether the two features constitute similar means, functions, and effects, and whether those skilled in the art can conceptualize them without creative work.
導入されたばかりの制度ですので、どのように運用されていくかが注目を浴びるものになり、今後の他の事件を含めた動向にも注目ですね。
*1:こちらなど参照:
中国における医薬品特許紛争早期解決メカニズム行政裁決弁法の解説(前編) « 新興国等知財情報データバンク 公式サイト
*2:均等論: 特許請求の範囲(特許権の範囲)として記載された内容と、問題となる技術の内容とが一部異なっていたとしても、同じ技術的範囲内にあり、実質的同一であるものと評価する理論
*3:出願経過において主張した内容と矛盾する内容の主張を侵害訴訟の場面で行うことは許されないという原則