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欧州単一特許の翻訳文は機械翻訳でもよいのか?

下記の投稿にもあるように、欧州単一特許の実現が間近になってきたこともあり、欧州単一特許も盛り上がってきました。今まではEU内では特許の効力は単一でなく国ごとであったため、国ごと特許の判断が異なったり、手続きや費用がかさむという問題がありました。導入当初はすべてのEU加盟国で適用はされませんが、欧州特許で大きなインパクトがある事項です。

 

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欧州単一特許の魅力のひとつは費用の低減がうたわれています、気になるのが欧州単一特許規則発効から最大12年の移行期間中は、特許出願書類(明細書)の全文の翻訳が求められることです(下記の規則になります)。

 

欧州特許庁 単一特許保護に関する規則

[解説:規則 18-翻訳文の公表]
1. 規則(EU)No.1260/2012 の適用日から開始する最大 12 年の移行期間中,単一効力を求める請求は当該規則第 6 条に従って明細書の翻訳文と共に提出されなければならない。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/epo-tanitsu.pdf

 

出願することだけを考えると、海外に特許出願する際に一番かかる費用は翻訳費用で、全文の翻訳が求められるとなると馬鹿にならないことになります。

例えば英語で出願した場合は、EU加盟国の言語のひとつへの全文の翻訳文の提出が必要となります。

 

一方で、欧州特許庁の規則によると、この翻訳文は如何なる法的価値も有さないとされています(下記の規則です)。となると、機械翻訳でもいいんじゃない?という気もしてきます。

 

欧州特許庁 単一特許保護に関する規則

[解説:規則 18-翻訳文の公表]
2. 規則(EU)No.1257/2012 第 9 条に従って,規則(EU)No.1260/2012 第 6 条(2)に基づき,参加加盟国は,EPC 第 143 条の意味内で,単一効力の請求が提出された日後できる限り速やかに(1)にいう翻訳文公表の業務を EPO に与える。当該翻訳文は如何なる法的価値も有せず,単に情報目的のみである。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/epo-tanitsu.pdf

 

ところがEUの規則をみると(下記の英語の規則です)、そのような翻訳は機械翻訳(automated means)で行われるべきでないという文言があったりもします。

 

EU規則1260/2012 

(12) During the transitional period, before a system of high quality machine translations into all official languages of the Union becomes available, a request for unitary effect as referred to in Article 9 of Regulation (EU) No 1257/2012 should be accompanied by a full translation of the specification of the patent into English where the language of the proceedings before the EPO is French or German, or into any official language of the Member States that is an official language of the Union where the language of the proceedings before the EPO is English. Those arrangements would ensure that during a transitional period all European patents with unitary effect are made available in English which is the language customarily used in the field of international technological research and publications. Furthermore, such arrangements would ensure that with respect to European patents with unitary effect, translations would be published in other official languages of the participating Member States. Such translations should not be carried out by automated means and their high quality should contribute to the training of translation engines by the EPO. They would also enhance the dissemination of patent information.

https://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2012:361:0089:0092:en:PDF

 

この文言がどのような法的効果をもってくるかは分かりませんが、翻訳文をどうするかは悩みどころですね。