特許でサーチエンジンで検索していると、こんな記事が。。!
知財業界ではひそかに知っていた人もいたかもしれませんが、ロバート秋山さんが「月曜から夜ふかし」で”あのネタ”の小道具を特許化していたとして、話題になっているそうです。
ちなみに、該当する特許は特許6249501及び特許6366202号で、下記のリンクの特許です。
特許6249501
特許6366202号
特許の権利範囲より、この図面を見ていただけるとわかりやすいと思います。
(特許6366202号の図面より引用)
これらの特許の権利関係をみてみると、発明者はロバート秋山さん、特許権者は株式会社エース・マーチャンダイズさん(HP:オリジナルグッズ企画・制作)となっているそうです。
(73)【特許権者】
【識別番号】509216267
【氏名又は名称】株式会社エース・マーチャンダイズ
(74)【代理人】
【識別番号】100172225
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 宏行
(72)【発明者】
【氏名】秋山 竜次
実際に、株式会社エース・マーチャンダイズさんのサイトでTシャツも販売されています(興味があれば下記のリンクにあるのでご覧ください)。
ネタとして見られるかもしれませんが、特許の手続きはいたって真面目です。
下記にあるように、高松 宏行先生という弁理士の先生を代理人にきちんとついてもらっています。
さらに手続きも非常にしっかりしており、意外かもしれませんが、強い特許の取り方の参考にとてもなります。
参考までに特許6249501の権利化までの道のりを見ていきましょう!
まず出願前に公表してしまったため、新規性を確保するため、「新規性喪失の例外証明書」を提出しています(これにより出願前1年以内の自身の公表を新規性欠如から救済できます)。
審査記録 | 2016/4/11 | 特許願 |
審査記録 | 2016/4/20 | 新規性の喪失の例外証明書提出書 |
その後「早期審査に関する事情説明書・報告書」を提出し、特許の審査手続きを迅速化する請求をして、通常より早く特許登録にすることを試みています。特許は登録にならないと裁判所等に権利侵害で訴えることができないので、今回のような旬なネタでは雨上がりのタケノコのように出てくるであろうパクリ商品を防ぐため素早く特許登録をすることが大事だったのでしょう。
審査記録 | 2016/5/17 | 出願審査請求書 |
審査記録 | 2016/5/17 | 早期審査に関する事情説明書・報告書 |
その後特許庁から登録できない不備のある個所の指摘(拒絶理由通知)が来ています。
ここで注目すべきは、書面での回答(手続補正書・意見書)以外に、面接記録や対応記録といった、電話・FAX・面会等を用いた特許庁の審査官とのコンタクトを密にとっていることで、称賛に値します。
書面のみでは特許庁の審査官との間に誤解が生じやすく、早期の特許登録を得るためにはこのような特許庁の審査官とのコンタクトは大事です。
審査記録 | 2016/7/5 | 拒絶理由通知書 |
審査記録 | 2016/7/13 | 面接記録 |
審査記録 | 2016/7/21 | 応対記録 |
審査記録 | 2016/8/22 | 面接記録 |
審査記録 | 2016/9/5 | 手続補正書・意見書 |
審査記録 | 2016/10/13 | 応対記録 |
審査記録 | 2017/2/9 | 応対記録 |
審査記録 | 2017/2/21 | 拒絶査定 |
その後残念ながら、審査官は不備が解消しない判断をしていますが(拒絶査定)、特許庁に再考を求めています(審判請求書)。その後めでたく不備は解消しています(特許審決)。
ここでも注目すべきは対応記録といった、特許庁とのコンタクトを密にとっているところはすごいですね。
審査記録 | 2017/2/21 | 拒絶査定 |
審判記録 | 2017/4/11 | 審判請求書 |
審判記録 | 2017/8/31 | 応対記録 |
審判記録 | 2017/9/12 | 拒絶理由通知書 |
審判記録 | 2017/9/14 | 手続補正書・意見書 |
審判記録 | 2017/11/14 | 審決 |
登録記録 | 2017/11/15 | 特許査定 |
さらに特許を一つとっただけで手続きを終わらせず、分割出願というコピーを作る出願もちゃんとしています。
一回特許登録をしてしまうと特許の権利範囲の修正は非常に難しくなります。一方で、パクろうとするひとは特許の権利範囲を見て権利範囲に入らないパチものを巧みに出そうとしてきます。そこで分割出願をして自身のコピーをつくっておくと、再度審査が受けられ、審査では権利範囲が一定の制限はありますが特許登録後より自由度が高いため、新しいパチものを捕捉できる権利範囲を新たに設定できる可能性が高まります。
こちらの手続きも見事です!!
ざっと見ていくと、強い特許を取れるように、非常に戦略的に手続きがされていてとても参考になる事例でした。
このような強い特許の取り方は最近は下記の書籍などにも詳しく載っているので興味があればご覧ください。
リコーの知的財産部に勤められ、知的財産センター所長、知的財産担当審議役を歴任し、現在独立されて知的財産教育やコンサルティングをされている田所 照洋さんが書いている書籍です。
下記で書評もかいています。
www.patent-topics-explorer.com