*本件の内容は2021年12月25日時点の知りうる途中経過をまとめたもので、誤りが含まれていたり、今後各国の行政庁や裁判所等で異なる判断などがされる可能性があります。適宜最新情報や一次情報を調べた上でご判断ください。
- 背景:人工知能(AI)である"DABUS"を発明者とする一連の特許出願の適法性が各国で争われている。
- 人工知能(AI)を発明者にすることを認めないと(今のところ)している国
- 人工知能(AI)だけを発明者にすることを(今のところ)認めた事例がある国
背景:人工知能(AI)である"DABUS"を発明者とする一連の特許出願の適法性が各国で争われている。
"DABUS"という人工知能(AI)を唯一の発明者とする出願が各国になされ、各国で特許出願を人工知能(AI)を唯一の発明者とする適格性が争われています。
あくまで争点は、「特許出願に発明者として人工知能(AI)を記載したときにどうなるか」で、「本発明を人工知能(AI)が行ったか」は争点となっていません。どのようなときに人工知能(AI)が発明を行ったといえるかは今後の事例などを引き続き見ていく必要があります。
こちらの関連出願やプロジェクトの内容については下記をご覧ください。
出願国の情報は下記をご覧ください。
人工知能(AI)を発明者にすることを認めないと(今のところ)している国
米国
米国特許庁はAIは発明者となれないという立場をとっており、本出願でも米国特許庁は発明者にAIであるDABUSを記載することは許されないとしました。バージニア州東部地区連邦地裁に上訴されましたが、同地裁も米国特許庁の判断を支持しています*。
*Thaler v. Iancu, et al., 1:20-cv-00903 D.I. 33 (E.D. Va. April 6, 2021).
欧州(欧州特許庁)
2021年12月21日欧州特許庁より、審査部に続き審判部でもAIであるDABUSを発明者欄に記載することは許されないというプレスリリースが出ました。今後その理由なども公表されるそうです。
より詳しくはこちらもご覧ください。
www.patent-topics-explorer.com
イギリス
イギリスでも、英国特許庁に続き、EWCA(控訴裁判所)でも、発明者は自然人のみがなれるもので、AIであるDABUSは発明者となれないという判決がでました。
Thaler v Comptroller General of Patents Trade Marks And Designs [2021] EWCA Civ 1374 (21 September 2021)
https://www.bailii.org/ew/cases/EWCA/Civ/2021/1374.html
ドイツ
ドイツも原則は発明者は自然人としています。
ただしBPatGで、基本は発明者は自然人でなければいけないが、明細書にその旨を特記することで、AIを開発したプログラマーを発明者と記載することや、自然人とAIを併記して発明者と記載することは許容するという判決がでています。
こちらドイツ最高裁までいく可能性がありますが、こちらの経過も要注目です。
詳しくはこちらもご覧ください。
www.patent-topics-explorer.com
日本
日本においては、特許庁から「発明者の表示は、自然人に限られるものと解しており、願書等に記載する発明者の欄において自然人ではないと認められる記載、例えば人工知能(AI)等を含む機械を発明者として記載することは認めていません」という見解が2021年10月27日に出されています。
DABUSのPCT出願は日本にも国内移行されていますが、いまだ公開されていません。これは上記の場合、方式要件違反となるため、仮に係属していても方式要件をクリアーしないと公開されない可能性があるかと思われます。
台湾
台湾特許庁においてAIであるDABUSを発明者とすることは方式要件違反とされた後、知財高裁に上訴されましたが知財高裁も台湾特許庁の判断を是認する判決をだしているようです。
智慧財產及商業法院 110 年度行專訴字第 3 號判決
韓国
JETRO機構記事によると、韓国特許庁は「自然人ではないAIを発明者に記載することは特許法に違反するため、発明者を自然人に修正しなければならない」との趣旨の補正要求書を5月27日付で通知したと発表しているそうです。
人工知能は、エジソンになれるのか? | ジェトロ寄稿記事(The Daily NNA【韓国版】より) - 知的財産に関する情報 - 韓国 - アジア - 国・地域別に見る - ジェトロ
人工知能(AI)だけを発明者にすることを(今のところ)認めた事例がある国
オーストラリア
オーストラリア特許庁はAIであるDABUSを発明者とすることはできないとしていましたが、オーストラリア連邦裁判所が一転してAIであるDABUSを発明者と記載することを認める判決を出しています。
こちらの判決に対してオーストラリア特許庁は上訴して争う旨のプレスをしており、今後の動向が見逃せません。
南アフリカ
南アフリカでは下記の特許が登録されていことが確認されています。一方で南アフリカは無審査方式であり、中身の審査はされていないようです。
ZA2021/03242
https://iponline.cipc.co.za/Publications/PublishedJournals/E_Journal_July%202021%20Part%202.pdf