昨年再生医療ベンチャーのヘリオスが権利者に含まれる特許に対し、株式会社ビジョンケアおよび株式会社VC Cell Therapyが経済産業大臣に対して、特許法第93条に基づく公共の利益のための通常実施権(いわゆる強制実施権)の設定を求める裁定の請求がなされた旨の投稿をしました。
www.patent-topics-explorer.com
その後、上記の投稿にもあるように、経産省は工業所有権審議会に発明実施部会を組織させ、そちらに意見を諮りました。
久しぶりに経過を見てみると、現時点で3回の審議が下記のように行われているようです。
工業所有権審議会発明実施部会
一方で、最新の議事録をみても次回以降も議論は継続することになっているようです。
(2)議事内容について
- 裁定請求2021-1については次回以降も引き続き議論することになったが、議事録や議事要旨については工業所有権審議会運営規定第5条に基づき非公開とする。
工業所有権審議会 発明実施部会(第3回) | 経済産業省 特許庁
今のところ公開されている運用指針は下記のもので、こちらの発明実施部会の審理が熟するまでの目標期限が設けられているようには見えません。
⑧ ⑦の通知により開催される発明実施部会においては、事件の概要を説明すると
ともに、必要に応じ請求人、被請求人その他その請求に係る特許に関し登録した
権利を有する者に意見を陳述する機会を与えたうえで、審議を行う。
⑨ 発明実施部会長は、必要に応じ、その事件に関する調査を行うべき委員(臨時
委員又は専門委員を含む。)を指名する。
⑩ ⑧の発明実施部会の審議を踏まえ、⑨により指名された委員と協議して、その
事件に係る裁定案を原則として⑧の発明実施部会の終了後20日以内に作成する
とともに、その裁定案を審議すべき発明実施部会の開催の日時を同部会長に諮つ
て決定し、その裁定案を添えて各委員に通知する。
⑪ 発明実施部会は、裁定案についての意見をまとめるため、必要に応じ参考人の
意見を聴取する。
⑫ 発明実施部会の意見が⑩の通知により開催される会合でまとまらなかつたとき
は、すみやかに次の会合を開催する。
裁定制度の運用要領(昭和50年12月1日決定、平成9年4月24日改正)(PDF:147KB)
https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/kogyo-shoyu/document/hatumei/yoryo.pdf
従って、実際の運用になったらどのくらい期間がかかるかわからなかったのですが、昨年12月に第一回の部会が開かれて以降、5か月たってもまだ継続議論になっていることがわかります。
今後どのくらいで部会での審理が終結にいたるのか(そのときに非公開である部会議事録でどの程度発表されるか)、個人的に興味がある事件です。