標準必須特許のライセンスに関する誠実交渉指針がついにリリースされました。
下記のライセンスオファー(ステップ1)から対案の提示(ステップ4)までの各段階のとるべき対応が示されているようです。但しあくまで指針のため法的拘束力はないため、実務ではそれぞれの事情も考慮する必要があります。
標準必須特許のライセンスに関する誠実交渉指針(PDF形式:255KB)
まず、ステップ1のライセンスオファーでは下記を提示することが好ましいとされています。
特許番号やクレームチャートは出すべきことが、誠実交渉に必要であるかは、国によって判断が分かれています。
こちらは日本での交渉時には注目すべきところかもしれません。
・特許番号のリスト
・特許請求項と規格を構成要件単位で対応させたクレームチャート(対象特許の件数が多い場合には代表的な特許に関するもの)
・実施者の製品が対応する規格に準拠していることを示す情報
・FRAND宣言がなされていることを示す情報及び対応する規格書の番号
ステップ2のFRAND条件での契約締結の意思表明についても、下記のようになっています。
近年ドイツ最高裁など意思表示については厳格に欧州で取り扱う傾向があり、日本では緩やかになっているように思われます。
実施者は、権利者からステップ1(ライセンスオファー)に規定された対応を受けた場合は、権利者に対し、対象特許について、FRAND条件でライセンスを受ける意思を有する旨を表明すべきである。実施者が本意思表明を行う際に、必要に応じて、ライセンス交渉の過程で対象特許の必須性・有効性・侵害該当性を争うことを留保することは、FRAND条件で誠実にライセンスを受ける意思を有する実施者であることを否定することにはならない。
ステップ3の 具体的なライセンス条件の提示も、具体的なライセンス条件を提示すべきとしています。
最後のステップ4の対案の提示 (ステップ3のライセンス条件を受け入れない場合) についても、下記のようになっています。
対案の提示をすると、欧州ではライセンスを受ける意思表示がないとされる場合もありますので、今回は積極的にすべきとされていますので、こちらも緩やかな解釈になっています。
実施者は、権利者からステップ3(具体的なライセンス条件の提示)に規定された対応を受けた場合に、提示されたライセンス条件を受け入れないときは、権利者に対して、ロイヤルティを含む具体的なライセンス条件を対案として提示すべきである。その際、実施者は、ロイヤルティの算出方法に加えて、第三者ライセンス15に関する情報、パテントプールの料率、裁判例等から適切な情報を用いて、当該ライセンス条件がFRANDであることを客観的に理解できるように説明すべきである。
全体的にみると、日本の交渉指針はライセンスをするよりも、受けることを想定して作られているように思われます。
IoTなどの標準必須特許で日本はライセンスを受ける側に回ることが多くなっている事情もあるのかもしれませんね。