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日本&続報: 特許法第93条裁定請求(いわゆる強制実施権の設定の請求)がされた事件で、その可否について工業所有権審議会の審議がスタート

2021年12月28日の日経新聞で、以前の投稿でも触れた特許第6518878号(発明の名称:「網膜色素上皮細胞の製造方法」)に関し、株式会社ビジョンケアおよび株式会社VC Cell Therapyが経済産業大臣に対して、特許法第93条に基づく公共の利益のための通常実施権(いわゆる強制実施権)の設定を求める裁定の請求がされ、審議開始された旨の報道がされています。

 

経済産業省の諮問会議で審議が開始されたことは公開されていますが、審議内容自体は非公開となっています。私が知財を始めてから日本でいわゆる強制実施権の発動を求める請求がされたことはなく、どのように審議されていくかも法律だけではわからない部分も多いので、興味深い事件です。

 

iPS特許、第三者利用の可否裁定へ 元理研研究者ら請求: 日本経済新聞

 

www.patent-topics-explorer.com

 

[再掲]

  • 事件の内容

特許第6518878号(発明の名称:「網膜色素上皮細胞の製造方法」)に関し、特許法第93条に基づく公共の利益のための通常実施権(いわゆる強制実施権)の設定を求める裁定の請求がされた事件です。特許庁公報(公示号)(号数3 (2021)-008[838])によると、裁定請求は2021年7月13日になされ、裁定請求番号は2021-1になるそうです。

 

  • 93条の公共の利益に基づく通常実施権の裁定請求とは

下記の資料などで「裁定制度とは、一定の要件が満たされた場合に、特許庁長官又は経済産業大臣の裁定によって、他人の特許発明等を、その特許権者等の同意を得ることなく、あるいは意に反して、第三者が実施する権利(強制実施権)を設定することができる制度である。」とされています。日本では特許権の不実施、利用関係、公共の利益を理由に裁定請求が認められており、公共の利益を理由とする裁定請求はいわゆる伝家の宝刀になります。平成16年の時点ではいずれの裁定も認められた事例はなかったそうです。

 

さらに、裁定制度の手続きは法律と下記の運用要領が定められいたりしますが、実際の事件がないので具体的にどう進んでいくのかは実例がないとわからなかった部分もあるので、そちらが見えるだけでも個人的に興味深かったりします。

 

第7回特許戦略計画関連問題ワーキンググループ議事次第・配付資料

第7回特許戦略計画関連問題ワーキンググループ議事次第・配付資料 | 経済産業省 特許庁

資料5 我が国における裁定制度について(PDF:62KB)

https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/senryaku_wg/document/07-shiryou/paper08.pdf

裁定制度の運用要領(昭和50年12月1日決定、平成9年4月24日改正)(PDF:147KB)

https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/kogyo-shoyu/document/hatumei/yoryo.pdf

 

  • 今回の進捗

裁定請求がなされると、特許権者などに答弁書提出の機会が与えられます。その後、経済産業大臣は、工業所有権審議会の意見を聴かなければならないと法律上されています。今回工業所有権審議会発明実施部会の第一回が2021年12月2日に開かれたそうです。

議事録や議事要旨については非公開となるそうですが、第2回以降も引き続き議論することが決定したことが読みとれます。

なかなか裁定請求がされそちらの経過を見れる機会は少ないので、引き続き注目していきたいと思います。

 

工業所有権審議会 発明実施部会(第1回) | 経済産業省 特許庁

(下記は議事の抜粋・引用)

(1)発明実施部会の出席者について

  • 裁定請求2021-1に係る発明実施部会について、工業所有権審議会令第6条5項に基づき設樂部会長により指名された、清水節委員が部会長代理として開催した。
  • 設樂部会長については、工業所有権審議会運営規定第3条に基づき、自己に関係のある事項のため、議事に加わらない。
  • 第1回発明実施部会の出席者については以下の通り(敬称略)。
    <委員・臨時委員>
    清水節(部会長代理)、井上由里子、岩井良行、辻󠄀淳子、三尾美枝子
    <専門委員>
    石川浩、加藤暁子、中山一郎

(2)発明実施部部会の運営について

(3)議事内容について

  • 裁定請求2021-1については第2回以降も引き続き議論することになったが、議事録や議事要旨については工業所有権審議会運営規定第5条に基づき非公開とする。