標準必須特許に関わる日本の訴訟で大きなニュースが飛び込んできました!
東京地方裁判所は、韓国のモバイルメーカーであるPantechが米Googleの日本法人に対して起こした特許侵害訴訟において、Googleの製品であるPixel 7の販売差し止めを命じる判決を下しました。この判決は、日本で標準必須特許(SEP)に基づく差し止め請求が認められた初のケースとして注目されます!(高裁に控訴される可能性もあります)
特許侵害でGoogleの販売差し止め 東京地裁、和解に非協力を問題視 - 日本経済新聞
標準必須特許(SEP)とは何か?FRAND宣言とは?
この事件の核心を理解するためには、「標準必須特許(SEP)」と「FRAND(Fair, Reasonable, And Non-Discriminatory)宣言」という概念が重要です。
標準必須特許(SEP): 無線通信の分野などにおける標準規格の実施に不可欠な特許のことを言います。
FRAND宣言: SEPの権利者は、その特許が技術標準に採用される際、技術利用者に公正、合理的、かつ非差別的な(FRAND)条件でライセンスを提供する宣言を一般的に行います。日本ではこれまで、FRAND宣言を行ったにも関わらずSEPに基づく差し止め請求を行う場合、特段の事情がない限り、「権利濫用」として認められないとされてきました。
今回のPantech対Google訴訟のポイント
今回の訴訟はこちらの情報が詳しいので、こちらもご覧ください。
まず、Pantechは、Google JapanのPixel 7スマートフォンが自社の特許技術と完全に一致し、特許権を侵害していると主張したそうです。そして、裁判所に対してPixel 7の販売、譲渡、輸入の停止を求めたとのことです。
本件の判決は、Googleの交渉における「非協力的な態度」を問題視したとされています(特許侵害でGoogleの販売差し止め 東京地裁、和解に非協力を問題視 - 日本経済新聞)。訴訟におけるこれらの行為から、裁判所はGoogleが「FRANDライセンスを取得する意図がない」と結論付け、「特段の事情」があるためPantechの差し止め請求が「権利濫用」には当たらないと判断したそうです。具体的な判断基準やあてはめが示されているであろう判決文が今後公開されるので、ここは非常に興味深い点です。
日本で初めてSEPによる差止を認めた裁判例
今回の判決は、2014年のアップル対サムスンの知財高裁大合議判決を含め、FRAND宣言をしたSEPで差止が認められた事例はありませんでした。本件は、日本でSEPに基づく差し止めが認められたのは初のケースです。
今後の影響と展望
今回の判決は、日本におけるSEP交渉での「ライセンスを受ける意思を有する」と認定されるため、特に利用企業側の「交渉への誠実さ」の重要性を強く示唆しています。FRANDライセンス交渉において、情報開示や具体的な提案を拒否するなどの不誠実な態度がとられた場合、「ライセンスを受ける意思を有しない」と判断され、差し止めという厳しい判断が下される可能性があることを、この判決は示しました。今後、日本でのSEP関連の係争や交渉において、この判決がどのような影響を与えるのか、注目が集まります。また、高裁に控訴される場合、どのような判断がされるかも注目です。