米国の医薬品の先発企業とジェネリックメーカーの間のバランスを利益調整を図る法律として、Hatch-Waxman法という法律があります(こちらの法律を詳しく知りたい場合は末尾の書籍がおすすめです!)。
Hatch-Waxman法ではジェネリックメーカーの早期の市場への参入を促すため、初回承認申請者には180日間の市場独占期間を付与します。これにより、遅れてジェネリック医薬品の承認申請をした企業は、この180日間の市場独占期間の間はジェネリックを販売できなくなります。これにより、初回のジェネリック医薬品の承認申請者は過当な値下げ競争をせず、利益を確保することができるようになります。
現在米国の国会で予算審議がされています。そこでFDAの予算要求と共に、法律の改正についての提案が、FDAから下記のように行われています(詳細は下記で説明)。
To complement the funding requests the agency’s budget proposal also includes a package of legislative proposals designed to bolster the FDA’s authorities to further its mission to protect and promote public health. Notable proposals include efforts to:
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- Amend the Hatch-Waxman 180-day patent challenge exclusivity provisions, so that the FDA can approve subsequent generic drug applications unless and until a first applicant begins commercial marketing of a drug and triggers the exclusivity period, at which point approval of subsequent applications would be blocked by 180 days. This would ensure that the exclusivity only lasts 180 days, as intended, rather than multiple years. This would substantially increase the likelihood that generic versions of patent-protected drugs come into the market in a timely fashion and would allow multiple versions of generic products to be approved quickly leading to significant cost savings.
内容としては、「ジェネリック医薬品の初回承認申請企業が医薬品の商業販売を開始し独占権期間が発動されない場合、FDAは後続のジェネリック医薬品申請を承認できるようにする。その際は、後続申請の承認が180日間市場を独占できるようにします。」ということになります。
というのも、下記のFDAの報告書で指摘されていますが、初回承認申請で承認を取得したジェネリックメーカーで、ジェネリック医薬品を180日間の市場独占期間で販売しなかった事例が数多くあったそうです。その割合は50%に及んだそうです。
https://www.fda.gov/media/154101/download
初回承認申請でジェネリック医薬品の承認を取得したジェネリックメーカーが、ジェネリック医薬品を販売しなくても、市場独占期間は有効なため、後続のジェネリックメーカーがジェネリック医薬品をその期間中販売できない事態が生じていたそうです。
実質的に、米国での後発医薬品の参入が50%の医薬品で180日遅れていたという事態が生じていたといえるかもしれません。
こちらを是正するため、初回承認申請でジェネリック医薬品の承認を取得したジェネリックメーカーが販売を開始しない場合、180日の市場独占期間であっても遅れて承認申請をしてきたジェネリックメーカーの販売を許可する枠組みに変更しているようです。
先発企業・ジェネリックメーカーそれぞれ対応を検討する必要がありそうですね。